先生、ボクを飼ってよ
「えー!? ピアノを弾いてたの、まっ……」
翌朝、椅子に後ろ向きに座って叫ぶ風香ちゃんの口を、慌てて塞いだ。
ホントは、誰にも教えたくなかった。
ボクと先生、二人だけの秘密にしておきたかった。
だけど、教えるって約束したから、仕方がない。
でも、この二人以外には知られたくなくて、風香ちゃんの口を塞いだってわけ。
「しかしまあ……意外だな。あの人、ピアノを弾くようには見えねえよ」
その点に関しては、同意。
ちなみに、先生が人前がニガテってこと、笑顔のことは言ってない。
それくらい、秘密にしたっていいよね……?
「瑞貴、今日は私暇だから、聴きに行ってもいい?」
「いいけど、弾くかは気分次第って言ってたから、いるかわからないよ?」
はっきりとダメって言う権利がボクにないこくらい、わかってる。
でも、あの時間を独り占めしたい気持ちもあったから、遠回しに断ってみたんだけど……
「いいのいいの」
うん、風香ちゃんには通じないよね。
わかってた。
「んじゃ、俺も行くー」
修くんはわかってて、行くって言ってるよね?
あー、もう。
そしてボクはこっそり、ため息をついた。