先生、ボクを飼ってよ
教えてくれるとは思えないけど。
でも、修くんが知ってるとしたら、風香ちゃんに聞いたんだと思う。
もしそうなら、ボクも教えてもらえるかな、と。
ていうか、こういうのって、人伝いに聞かないほうがいいに決まってる。
まあ、ボクがそうされるの嫌なだけ。
自分がされて嫌なことは、人にしない。
だから聞かない。
「んで? 瑞貴が頑張ってる理由は?」
修くんはあの話題が終了したと思ったのか、次の話題に入った。
多分、こっちのほうを知りたかったのかな。
「ピアノを聴きに行くためだよ」
「だと思った。そんなに好きか? 森……アイツが弾くピアノ」
ボクが他の誰かに知られたくないってわかってるからか、修くんは言い直した。
好き、か……
それはなんか違う気がする。
なんというか、こう……
ずっと聴いていたい、心地良い音って感じ?
ああ……
なんでボク、ちゃんと国語を勉強してこなかったんだろう。
ちゃんと、先生のピアノを言葉で表現したいのに、語彙力が足りないよ……
「修くんも聴いたでしょ? あの綺麗な音色」
「確かに綺麗だったけど、あれをアイツが弾いてるって思うとなあ」
修くんは苦笑いしながら、頭を掻いた。