先生、ボクを飼ってよ
やっぱり、そこは気になるところなのかな。
ボクは逆に、先生が弾いててよかったと思えるんだけど……
というか、プリントを渡されるときに先生の微笑みを見たから、そう思えるのかな。
「ちなみになんだけど、瑞貴。アイツのことも好きだとか言わねーよな?」
「え? わかんないけど……素敵な人だな、と」
「そっか」
修くんはそれだけ言うと、自分の席に戻った。
それと入れ替わるように、ボクの周りに三人の女の子が集まった。
もうすぐ授業なのに……
「瑞貴ちゃん、好きな人出来たの!?」
「誰!?」
「どんな子なの!?」
そしてボクは質問攻めされた。
どれから答えたらいいのか、わからない。
……修くん、時間を見て席に着いたんじゃなくて、これから逃げたんだね?
「ねえ、瑞貴ちゃん!」
「どんな子かだけでも!」
「田辺!」
あ、諦めて修くんに聞いた。
修くんは嫌そうな顔を見せる。
自分でまいた種じゃないか。
修くんとの会話が聞かれた結果がこれなんだから。
「んー……ピアノが弾ける人。どうだ瑞貴。間違ってないだろ?」