先生、ボクを飼ってよ
修くん、ボク初めて顔が引き攣るってことを体験したよ。
どうして風香ちゃんのことは教えてくれなかったのに、ボクのことはためらいなく人に教えるかな。
「ピアノが弾ける人……」
「みほりんとさらちんが弾けるって言ってた!」
高校だと誰が弾けるかなんてわからないのに、よく把握してるねー……
「私たちの知り合いにはあの二人しかいないね……ちなみに、この中にいる?」
知り合いに二人もピアノが弾ける人がいるなんて、羨ましいなあ。
ボクの周りにはいないし。
「いないよなー。つーか、お前らじゃ見つけらんねーよ」
修くん、いい加減その口を閉じてください。
そんなふうに余計なことしか言わないから、女の子に好かれないんだよ。
なんて、言わないけどさ。
自分で気付けばいいと思うんだよね、こういうの。
「瑞貴ちゃん、どうしても教えてくれない?」
そんなこと言われても……
「だって、好きってわけじゃ……」
ボクが言い訳じみたことを言ってる途中で、チャイムが鳴った。
ボクの周りに集まった女の子たちは、各々の席に戻った。
……絶対、次の休み時間にまた同じ質問されるんだろうな。
そして、今からは森野先生の授業だった。
あんなこと話した後だからか、変に緊張しちゃって、授業が頭に入ってこなかった。