先生、ボクを飼ってよ
そんな言葉が耳に入ったから、ボクたちは慌てて振り返った。
予想通り、森野先生が立ってる。
いつもの顔なのに、怒ってるように見えてしまう。
修くんの顔がどんどん青ざめていく。
先生はそれ以上なにも言わず、二年一組の教室に入った。
「……いつの間に後ろにいたんだ?」
「さあ……」
ていうか、進級初日から気まずい……
「そんなところに突っ立ってどうしたの、二人とも」
「あ、風香ちゃん。ちょっと修くんがやらかしちゃって」
ボクたちに話しかけてきたのは、ボクの幼なじみの風香ちゃん。
結構男らしいところがあるから、ボクより男にふさわしいんじゃないかと思うときがあるんだよね。
おまけに、ボクより背が高いし。
「まあ、そんなことだろうと思ったよ。瑞貴がアホやらかすわけないし。で、なにしたの?」
「森野繭のクラスは楽しくないぞって言ったら、本人に聞かれた」
すると、風香ちゃんはお腹をかかえて笑った。
「バカだなあ、修は。てか、繭先生っていい先生だって聞くよ?」
「それはお前が一応でも女子だからだよ」
「一応は余計よ、アホ修」
風香ちゃんは勢いよく修くんの頭を叩いた。
うわ、痛そう……