先生、ボクを飼ってよ
「……要件はわかってるわね?」
森野先生はそう言って、持ってる資料に目を落とした。
たったそれだけなのに、ボクは先生に目を奪われた。
すると、風香ちゃんの言葉が頭に浮かんだ。
『勉強するの!』
……うん、その通りだ。
好きだとか言ってられる状況じゃない。
「テスト……ですよね」
「そうよ。これ、課題プリント。今日中に提出するように」
渡されたのは新聞の編集手帳四日分のコピーと、方眼用紙四枚。
「視写。やり方は知ってる?」
「一応……」
正しい原稿用紙の使い方で、そのまま文章写すだけ……だったはず。
あとでちゃんと風香ちゃんに確認しよう。
「そう。それじゃ、頑張ってね」
先生はそれだけ言うと、どこかに行ってしまった。