先生、ボクを飼ってよ
「椎名君、読書は好き?」
先生の視線が落ちると同時に、ボクは手を動かす。
見惚れてたって、知られたくなくて……
「年に一冊読めばいいな、くらいです」
「じゃあ……一ヶ月に一冊。なんでもいい。薄目の本でも。とにかく、文章を読むといいわ」
先生のアドバイスがあまりに簡単で、ボクは疑ってしまった。
「それで何か変わります?」
「変わると思ってやるしかないのよ。国語にはこれといった勉強法がないから」
その言葉に、思わず手が止まる。
そして、先生の顔を見た。
先生はボクの行動を不思議に思ったらしく、首を傾げている。
「……先生の言葉とは思えない」
すると、先生は小さく微笑んだ。
その微笑みで、ボクはまた先生の虜になる。
「でも事実よ。さ、とりあえず視写を終わらせましょう」
「はーい」
この気持ち、いつか先生に伝えられたらいいな。