先生、ボクを飼ってよ
放課後になり、ボクは久々に音楽室に来ていた。
もう先生の演奏は始まっていて、ボクはまた同じ場所に座っている。
「先生、今日はなにかあったんですか?」
邪魔にならないような質問とは思えないけど、ずっと気になってたことを聞いてみた。
「どうして?」
「だって今日、修くんの答案用紙を……今までの先生なら、あんなことしなかった」
先生は少し考えて、答えてくれる。
「……私、生徒と仲良くなれたの、椎名君が初めてなの」
「ボクが? それは嬉しいですけど……それと今回の行動、どう関係があるんです?」
ボクと仲良くなったから、修くんに意地悪を……
うん、やっぱり理解できない。
「教室に椎名君がいると思ったら、緊張が少し和らいだ。そして、素が出た」
そういうことか……
「……やっぱり、先生はズルいや」
「そう?」
そうだよ。
だって、ボクが喜ぶであろう言葉を、無意識に言うんだもん。