先生、ボクを飼ってよ


放課後になり、ボクは久々に音楽室に来ていた。


もう先生の演奏は始まっていて、ボクはまた同じ場所に座っている。



「先生、今日はなにかあったんですか?」



邪魔にならないような質問とは思えないけど、ずっと気になってたことを聞いてみた。



「どうして?」


「だって今日、修くんの答案用紙を……今までの先生なら、あんなことしなかった」



先生は少し考えて、答えてくれる。



「……私、生徒と仲良くなれたの、椎名君が初めてなの」


「ボクが? それは嬉しいですけど……それと今回の行動、どう関係があるんです?」



ボクと仲良くなったから、修くんに意地悪を……


うん、やっぱり理解できない。



「教室に椎名君がいると思ったら、緊張が少し和らいだ。そして、素が出た」



そういうことか……



「……やっぱり、先生はズルいや」


「そう?」



そうだよ。



だって、ボクが喜ぶであろう言葉を、無意識に言うんだもん。
< 49 / 116 >

この作品をシェア

pagetop