先生、ボクを飼ってよ
なんか、悔しい。
ボクばっかりドキドキして。
これが惚れた弱みというなら、しょうがないかもしれないけど……
先生も、ボクと同じくらいドキドキすればいいのに。
「ねえ、繭先生って呼んでもいい?」
考え抜いて見つけたのが、下の名前で呼ぶ。
どうしてこんな簡単なことしか思いつかないんだろう。
「どうして確認するの?」
すると、先生は不思議そうに顔を上げた。
鍵盤から目を離しているのに、演奏が止まっていない。
……凄いな。
「なんとなく。ダメですか?」
「いいえ、そんなことはないわ」
そして、視線を戻した。
やった。
許可は得たからね。
「繭先生」
ボクが呼ぶと、繭先生はまた顔を上げた。