先生、ボクを飼ってよ


話題、変えないと。


あの話を掘り下げられたら困る。



「それより、佐伯さんとはちゃんと話せたの?」


「うん。仲直りしたよ」



本当に、瑞貴君は可愛く笑うなあ……



でも、もうこの笑顔に甘えるわけには、いかないんだ。



自分にそう言い聞かせ、重い口を開く。



「……あのね、瑞貴君」


「ん?」



私が決心したのがおかしくなるくらい、瑞貴君は軽く返事をする。



揺らぐな、私。



「私、やっぱり瑞貴君の気持ちに答えられない。優心……彼のことが好きなの。だから……私のことは、諦めてください」



……心が痛い。


断ることが、こんなに辛いなんて思わなかった。



「ボク、諦めないよ」



あまりに真剣な目をするから、私は言葉が出なかった。
< 78 / 116 >

この作品をシェア

pagetop