先生、ボクを飼ってよ
「もっと優しく言ってくれてもいいよなー」
始業式が終わって体育館を出ると、修くんは開口一番そう言った。
「あれはボクたちが悪かったんだから、しょうがないよ」
「そういや、アイツは?」
「風香ちゃんだったら、あそこにいるよ」
ボクは後ろを見る。
風香ちゃんは女子の輪に入ってる。
「アイツ、よくいじめられないよな」
「風香ちゃんが? どうして?」
風香ちゃんの悪いところなんて、一つない。
だから、いじめられる理由、ないと思うけど……
「いや、普通人気者の幼なじみって女子から恨み買うだろ」
そうなのかな。
ていうか、ボク、そこまで人気?
「まあ、お前とアイツが付き合ったりなんか想像つかねーけど」
「風香ちゃんはボクの大切な友達だよ」
「うん、お前が言うと、心からそう思ってるような気がするから面白いよな」
ボクにはなにが面白いのか、まったくわからないよ……
「つーか、瑞貴もアイツも、好きな人くらいいねーのか」
「風香ちゃんはわからないけど、ボクはいないよ」
「だよなあ……お前に好きな人でも出来たら、その人にベッタリになりそうだし」
ボクもそう思うから、なんとなく返事が出来なかった。