先生、ボクを飼ってよ
教室に着き、自分の席に向かった。
……はずなのに、ボクは席に座れずにいた。
また、たくさんの人に囲まれたんだ。
みんなと話してたら、先生が教室に入ってきた。
ホームルームを始めるのかと思ったら、プリントを配り歩いてる。
「先生、手伝うよー」
ボクが手伝いに行こうとすると、風香ちゃんが先生の手から半分くらいのプリントを取るところが目に入った。
風香ちゃんも、同じことを考えてたんだね。
「森野先生、ボクも」
「……ありがとう」
先生は、ほんのわずかだけど、口角を上げた。
普段は全然表情とかわからないのに、このときはなぜか、喜んでるんだってわかった。
「先生、笑うと美人ですね」
「教師をからかわないで」
先生はポーカーフェイスを崩さず、教卓に戻った。
せっかく、いい表情だったのに、もったいないなあ。
「瑞貴、二枚ちょうだい」
「うん、どうぞ」
ボクは手元に残っていたプリントを、風香ちゃんに渡す。
これで配り終えたのかな。
そして、そのプリントを参考に、ホームルームが行われた。
それが終わると、下校になった。
「瑞貴、今日用事は?」
リュックに荷物を入れてたら、修くんに声かけられた。