さよなら、嘘つき君。
成瀬君は音楽を聞いていたらしく、イヤホンを外す。イヤホンを外す姿さえも、綺麗に見えてしまう成瀬君の外見は本当に完璧だと思ってしまう。
『こころちゃんもこの電車なんだね。隣にいたのに、気づかなかった。ごめんね』
「い、いや。私、影薄いし」
『ははっ、そんなことないのに。――あ、こころちゃんの前で笑っちゃダメなんだった~また怒られちゃうね』
「怒ってはないのに…」
『昨日はごめんね。放課後のこと。俺変だったよね。こころちゃんにもいつも通り接するから、俺のこと嫌わないでね』
「う、うん」
『あ、もうすぐ着くね』
そう言って成瀬君は、窓の外を見つめた。遠くを見つめているかのようだった。