さよなら、嘘つき君。
成瀬君は振り向かずに、すたすたと歩いて行ってしまった。
――ああ、恥ずかしい。何やってるんだろう。
周りには自分の高校の生徒がたくさんいるというのに、大きな声で呼んだ挙句、無視されてしまう姿をさらしてしまうなんて…。
私は周りを見れずに、目を伏せ、下を向いた。周りの生徒が先に行ってくれないかなと思い、ずっと歩かず止まったままでいた。
『なに、こころちゃん』
――え?
先に行ってしまったはずの成瀬君の声が、頭上からした。頭を上げると、成瀬君が立っていたのだ。