紳士的上司は愛を紡ぐ
小さなミーティングルームに残された
───彼と、私。
「じゃ、じゃあ私、片付けしていくので!
八王子アナ、今日はお世話になりました。お忙しいでしょうし、先に戻ってて下さい。」
ああ、なんで
こんな言い方しかできないんだっ……!
「お気遣いありがとうございます、
じゃあお先に。」
優雅に笑って部屋を後にする彼に、寂しさが募る。
そう思うなら引き止めろよ、という自己嫌悪を振り払うようにホワイトボードの文字を消していると、
ガチャ っという音と共に、
再び、彼が姿を現した。
嬉しさの余り、頰が緩みそうなのを堪え、ホワイトボードに視線を戻す。
「すみません、忘れ物をしました。」
なんだ、期待した私が愚かだった。
「そうですか、忘れ物って……」
とボードを消し終わり、振り向いた瞬間。