紳士的上司は愛を紡ぐ


───私は、彼に抱き締められていた。


「八王子アナ!?忘れ物じゃ……」

「忘れ物ですよ。
……貴方を甘やかすのを忘れてました。

今日こんなに頑張っていたのに。」

耳元でそう囁きながら、私の髪を撫でる。


「ちょっと、こんな所で誰か来たら、、、」

それでも理性が勝り、
彼の胸を押し返そうとすると、

「鍵ならかけてます。お願いだから、
もう少し、このまま……。」

さらに強く腕の中に誘う。

「最近、貴方に避けられている気がして、寂しかった。今日だって俺が来なかったら、あのまま一人で乗り切るつもりだったんでしょう?」

「いや、だってそれは仕事ですし……。」

「そういう所が心配なんです。全く貴方から目が離せない。」

耳にかかる甘い吐息に、心臓が痛いほど高鳴る。その感覚に夢を見ているんじゃないかと思った。
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