紳士的上司は愛を紡ぐ
「泣くほど、嫌です。貴方に、キスされたり、こうして距離を詰められる度、その意味が分からなくて、辛いんです。」
堰を切ったように、涙と言葉が溢れる。
返答を聞いた彼の視線が上がる。
「それは……貴方と距離を縮めたいから。」
私の目を見てはっきり答える彼に、ますます心は惑うばかりだ。
「間違ってます、だって貴方には、
居るんでしょう?……"大切な人"が。」
その瞬間、彼の私を見る目が変わった。
ほら、やっぱり、そう。
指摘せず彼に抱き締められたままの方が、幸せだったのだろうか。
「だから、もう優しくしないで下さい。
勘違いしたくないので。」
お願いだから、もうこれ以上、
私の心を乱さないで。
自嘲気味に話して、もう会議室から出ようとした時だった。