紳士的上司は愛を紡ぐ
studio7 聖なる夜の再会
*side 透

───始まりは、13年前。
一人の女の子を見た、あの日。

「八王子〜、緊張してるか?」

「最後の夏だからな、それなりに。」

当時、野球部のピッチャーをしていた自身は、県大会の開会式に参加した。高校3年という最高学年で迎える夏は、例年より暑い気がする。

参加校の入場行進を終え、マウンドに立つ。
降り注ぐ日光が、心の奥底にある闘志を燃やしていく。

しかし、それは自分の闘志なのか、
それ以上に、
周りの期待に応えたいからなのか。

「うちのエースだからな、最後の夏も頼む。」

「八王子はいいよな、才能があって。」

昔から言われてきた言葉に、もうこの時には違和感を感じなくなっていた。

ただ、要領が良くそれなりに何でも出来るようになったのは、少なからず "そう見せる努力" もしてきたからだ。


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