紳士的上司は愛を紡ぐ

きっと彼女も、緊張と圧力に耐えている。

頑張ってるのは、自分だけじゃない。
何を思い悩んで、独りよがりになっていたんだろうか。

たとえエースでもキャプテンでも、最後の夏は最高のチームで終わらせる。

それで十分じゃないか。

はっと目が覚めた途端、少し笑えた。

「───以上で、開会式を終わります。」

という彼女の美声と共に、球場が拍手に包まれる。思わぬ相手にエールを貰った自身は、手の平が真っ赤になるほど、賞賛を贈っていた。

場内の拍手を聞いた彼女は最後、ほっとしたような表情で笑い、手の震えは治まっていた。

そこでモニター映像が切り替わり、自身は野球帽を被り直した。
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