紳士的上司は愛を紡ぐ

「……アウトっ!!!」

マウンドに歓声が上がる。
自分に向けられたものではない、歓声。

彼女のアナウンスを聞いてから、既に数週間経過したが、自身は相変わらず野球をしており、ついには県大会の決勝まで来ていた。

しかし、甲子園は夢で終わった。

決勝戦、あと一歩の所で自身は敗退。
それは、引退を意味する。

純粋に熱を上げ、楽しむことができたことで野球に対する後悔は無かった。

しかし捧げた青春の分だけ、
心に空いた穴も大きい。


秋を迎え、短かった髪が伸びてきた頃、
自身は進路選択に迷い始めた。

将来、プロになるつもりで野球をやってきた訳ではない。いくら才能と言われたって、自分の力量も実力も自覚している。
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