紳士的上司は愛を紡ぐ
そう言って彼がポケットから取り出したのは、赤いリボンの掛かった長細い箱。そこに印字されるのは、誰もが憧れるジュエリーブランドのロゴだった。
「さっき一旦出て行ったのは、コレを取りに戻ったから。
メリークリスマス、麻里。」
「え、…………これを、私に?」
差し出された箱を、震える手でおずおずと丁寧に開ける。
そこには一粒の輝きが添えられたゴールドのイニシャルネックレス。
「言ったでしょう?
───"好きだと言って渡す"って。」
首元に手を回し、彼が着けてくれるネックレスの細い冷たさが肌に馴染んでいくように、あの日彼が紡いだ愛が自身の心に溶け込む。
その溶け込んだ愛に応えるように、次第に鼓動が増していく。
その想いを余すことなく伝えたくて、私は恥ずかしさも忘れて、自ら唇を重ねた。