紳士的上司は愛を紡ぐ

「今度の休み、初詣、行く?」

久しぶりの『8+2=』の収録後、スタジオから戻るオフィスの廊下で、彼が小声で囁いた提案にびくっと反応する。

「八王子アナ、その件に関しては少しお時間を頂きたいのですが……?」

今、周りに人が居ないからって関係者もよく通る廊下で発言しないでほしい。あくまで仕事の話を装う。

「では二宮アナは今の所、どうお考えですか?」

ノリが通じた彼が不敵な笑みを浮かべて、選択を迫る。

「……っ。ぜひ、前向きに検討致します。」

ギャップという彼の押しに、私は敵わない。

そして今日、その出遅れた初詣の日がやって来た。朝と深夜という違いはあれど、平日のレギュラー番組を担当することが多い私達は、意外にも予定が合った。
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