紳士的上司は愛を紡ぐ

互いの自宅の中間地点に位置する、ひっそりと佇む神社の前で待ち合わせる。到着すると参拝客は殆どおらず、彼の姿はすぐに見つかった。

鼻筋の通った端正な横顔と、180cmを超える長身。仕事をする姿ばかりに憧れていたが、改めて見ると、その容姿に目を奪われる。

「おはよう、麻里。」

おまけにこの深みのあるバリトンボイスだ。
この人はどこまで私を夢中にさせるのだろう。

「何でそんなに嬉しそうなんだ?」

来るなり頰が緩んでしまう私を見て、彼まで可笑しそうに目を丸くする。

「いや、カッコいいなぁ……と。」

「会うなり煽らないでくれ。
こっちが我慢出来なくなるから。」

耐えきれず零した本音に、彼の瞳は余裕無さげに揺れた後、寒さに冷えた私の手をとる。

繋いだ手から、私の想いなんて全て流れ込んでしまえばいい。我ながら呆れた考えだが、結局はそう思って握る手に力を込めた。
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