紳士的上司は愛を紡ぐ

「ごめん、こんな場所で話すんだけど。」

何故、謝るのだろう。
予感が的中しないよう必死で祈る。

「俺、この春からフリーに転向するんだ。」

「え?」

フリーって……つまり。

「フリーアナウンサーってことですよね?」

全く予期せぬ単語の登場に思わず訊き返す。

「そう、やっぱりお互いの為にもその方が良いかと思って。」

お互いの為……?

私が同じオフィスに居ると何か問題でもあるのだろうか。公私混同した覚えは無いが、無意識の内にそう思われる態度をとってしまったのかもしれない。
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