紳士的上司は愛を紡ぐ

そう宣言した彼を信じたかったし、何より彼がそう言うなら、離れていても大丈夫だという自信が私にもあった。

それに、これまでの担当番組が無くなる訳ではないので、『8+2=』は新年度を迎えても相変わらず二人でMCを担当する。

今日は、その転向後初の収録だ。

今回のゲストに挨拶をする前に、
楽屋にいる彼を訪ねる。

局アナの場合、基本は社員扱いであり、アナウンス室に所属している為、楽屋を与えられることはないが、フリーになると楽屋を用意されるようになるのだ。

同じEBS社内に居るのに、
"八王子 透様"と貼り紙のある楽屋へ入ることに少なからず違和感があった。

ノックと共に、声を掛ける。

「失礼致します、八王子アナ、ゲストの方への挨拶をご一緒しようと思いまして……」
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