紳士的上司は愛を紡ぐ
「そんなに焦らなくても、
まだちょっと早いじゃないですか。」
重なった手をそのまま握られる。
絡められた細く長い指はじんわりと熱くて、私の熱情を簡単に煽る。
「もしかして、俺と会うのが楽しみで早く来てくれた……とか?」
「それはっ!……否定、出来ないですけど。」
勤務中の口調を崩して、こちらを覗き込む彼にあっさり降参してしまう。恥ずかしさの余り俯く私を、彼は背後からギュっと抱きしめた。
「あぁ、フリーに転向して良かったって、今、痛感してます。楽屋でこんな風に麻里と会えるなんて。」
「こんな所で痛感しなくていいですっ。
もっとご活躍されてからにして下さい!」
耳元で囁く彼は、そのまま首筋に口付ける。
「んっ、八王子アナ。駄目です。」
「二人の時にそう呼ぶことの方が、俺は駄目だと思うけど?」
抵抗はあっさり避けられ、首筋から髪、耳元へと彼の熱い唇が上昇する。
「んあっ、透さん。」
収録前に私を動揺させないでほしい。