紳士的上司は愛を紡ぐ
彼の唇が、そのまま耳元で止まる。
「活躍しますよ、
麻里にずっと好きでいて欲しいので。」
もう十分過ぎるほど好きなのに、
優しい彼の誠実さにますます溺れていく。
好きになって貰いたいのは私の方だ。
「じゃあ画面の向こうに、いつも私がいると思って伝えてくれますか?」
彼の優しさに甘えてねだってしまうのは、私の悪い癖だろうか。少しの勇気と罪悪感を持ちながら、おずおずと尋ねる。
その質問を聞いた彼は、くすっと笑い、向き直って正面から私を包み込んだ。
「画面越しじゃなく、
麻里にはずっと、一番傍で見ていてほしい。」
そんなの、決まってる。
むしろ画面越しでは満足出来なくなっているのは、私のほうかもしれない。
つい紳士的な彼には欲張ってしまうのだ。
───だから、お願い。
その声でずっと、愛を紡いで。
END