紳士的上司は愛を紡ぐ

そういえば、高校時代は野球の強豪校でピッチャーをしていた、と涼子が言っていたような気がする。

この人は、一体どこまで完璧なのだろうか。

頭の片隅でそんな事を考えながら、

「八王子アナ、お疲れ様でした。」
と別れる前に声をかけた。

「お疲れ様です。
これから宜しくお願いしますね。」

そう返事をする彼の笑顔は、疲れを全く感じさせない。この原動力はどこから湧いてくるのかと、むしろ少し羨ましくなった。

去っていく彼の背中を見つめながら、私は自分に求められている役割を果たせるのか心配だった。
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