紳士的上司は愛を紡ぐ
やはり涼子の言っていた通りのようだ。
きっと完璧な彼のことだから、野球部時代もアナウンススクールでも優秀だったのだろう。
なんて思っていると、
「でも、大学になって始めたばかりの頃は、大変でした。野球とは全く違う声の出し方や、細かいアクセントも苦手で。」
少し自信なさげに、八王子アナがそう続けるものだから、私は驚いた。
完璧な上に謙虚。
知れば知るほど、彼には魅力しかないようだ。
「……八王子アナでも、そんな風に感じたことあったんですね。
私なんて、今でもアクセントや発音に苦戦しっぱなしですよ。」
私が半ば自虐気味にそう返すと、彼は穏やかに笑って首を横に振った。
「……そんなことありません。
二宮アナの読みは素敵です。」
深みのあるはっきりとした声が、いつもの画面越しではなく、直接私に伝わる。
その真剣な瞳から目が離せない。