紳士的上司は愛を紡ぐ
「はい。原稿は読めると思うのですが、やはりバラエティ自体には慣れてないので……。
申し訳ありません、楽屋挨拶くらいでこんなに動揺してしまって。」
自身の情けなさを感じながら、彼に向かって頭を下げる。
その瞬間。
私の頭をぽんぽんと、
八王子アナが優しく撫でた。
ほんの一瞬のことに驚いて顔を上げると、穏やかに笑う彼が、
「二宮アナなら、大丈夫です。」
と言った。
……そう、
こうやって彼は私の安定をさらに崩す。
この余裕は一体、どこから来るのだろうか。
完璧な相手と番組をしていくことに、やはり不安が募る。
「番組上、求められているのは、冷静キャラの私なのに。こんなに緊張してしまうとは、情けない限りです…。」
思わず、心中の曇りを打ち明けてしまう。
本番直前にこんな弱音を吐いている場合ではない。冷静にならなくては。