紳士的上司は愛を紡ぐ
焦る一方の私に、
「……キャラじゃないですよ。
二宮アナなら、きっと落ち着いて話せます。」
八王子アナが真っ直ぐな瞳でそう言った。
「キャラじゃ、ない……?」
彼の瞳に映る私は、言われた言葉を繰り返す。
「はい、そのままでいいんです。
私は、その真っ直ぐ原稿と向き合う二宮アナを指名したんですから。」
彼特有の低いトーンで紡ぐ言葉が、穏やかに私の心に響く。
「……ありがとう、ございます。」
"そのままでいい" ───。
そう言われたことが、私に何よりの自信を取り戻させてくれる。
今まで心のどこかで、バラエティを担当することに引け目を感じていた。
やるからには"女子アナ"として振る舞うべきなのか、キャラとして冷静でいなければならないのか、いくら原稿を読んでも不安が消えなかった。