紳士的上司は愛を紡ぐ
意外にも食いついて下さった神谷さんの反応に、観覧席の方も同意するように頷く。
「……はい、未熟者ですがお願いします。」
思わず神谷さんにも、観覧席にも会釈をした。
その動作を見た神谷さんは目を丸くした後、
「……っふふ、二宮アナって丁寧ね。」
と笑いを堪えつつ、八王子アナに言った。
「そうですね、面白いでしょう?」
そう返答する八王子アナも、いつもよりどこか楽しそうに見える。
「えぇ、"女子アナ"っぽくない、深夜ニュースばかりされているから、もっと高飛車なのかと思ってたわ。」
その言葉と共に神谷さんは、私に向かって華麗にウインクをした。
……自身にそんな印象があったとは。
"女子アナ"っぽくない、そう言われたことは、かなり嬉しかったが、高飛車イメージがあったことには驚く。
確かにある意味、仕事を選んでしまっていたのかもしれないし、そんなイメージを持たれても仕方ない。
結局は、ただの自身の意地だったのだと、少し反省する。
「とんでもないですっ……、頑張ります!」
勢いよくもう一度頭を下げると、神谷さんが、
「もうっ、顔を上げて?二宮アナが素敵な方なのは分かったから。」
と困ったように続けた。