紳士的上司は愛を紡ぐ
それもそのはず、八王子アナはまだしも、私はバラエティ経験も浅く、おまけに楽屋挨拶くらいで足が震える未熟者だ。
きっと、神谷さんも心配だったのだろう。
けれども最後に"楽しかった"と言ってもらえたことが、私に何よりの達成感と充実感を味わせてくれた。
私自身、彼女とのトークは楽しい時間だった。
ほっと胸を撫で下ろし、隣に立つ八王子アナを見上げる。既に私の方を見ていたらしい彼と目が合う。
「二宮アナ、ばっちりじゃないですか。」
そう言って笑う彼を見た途端、緊張の糸が切れたように全身が和らぐ。
「ありがとうございましたっ……。」
安堵の息と共に挨拶をする私に、
「二宮アナの進行、私なんて必要ないくらい、頼もしかったですよ。」
と少し拗ねたように八王子アナが付け足す。
そんなはずはない。
収録中、神谷さんから訊き返された時、観覧席の方への振りが分からない時、いつだって助けてくれたのは彼だ。