紳士的上司は愛を紡ぐ

「私はちょっと誇らしいけどな〜。麻里がアナウンサーとして注目されるのは。」

「注目って……それは八王子アナの隣にいるからであって、私の実力じゃない。」

私は、それがたまらなく嫌だった。

ネットニュースでは、"アナウンサーとしての務めを果たしている"・"隠れた実力派"
と書かれていたが、それはあくまで八王子アナの横にいる偶然私が目に入ったからで。

正直、こういった取り上げられ方が好きではなかった。

「『8+2=』で、麻里の実力が発揮できた事には喜んでもいいと思うけど?」

涼子の言うことは正しい。つまらない意地を張っていることは分かっている。
そう分かっていながらも、この自身に初めて向けられる注目に違和感を感じてしまう。

アナウンサーとしての"私"を、
今、やっと、
見てもらえる時が来たのだろうか。

「この調子でいけばいいんだって。」

同期の言葉と自分を信じ、今の私は役目を全うするしかなかった。


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