紳士的上司は愛を紡ぐ

「今日もアク辞引いてるんですね。万全の体制で『8+2=』の収録に挑んでくれていること、本当に頼りにしてます。」

そう言って八王子アナは、私のデスクにいつかのミルクティーを置く。

「お力になれているかは自信がありませんが……お気遣い頂きありがとうございます。」

こういうさりげない優しさが、私の余裕の無さをさらに目立たせるのだ。レギュラーを5本も抱える多忙な彼より、私の方が切羽詰まってどうする。

「……後悔してたりします?」

「後悔って、一体何を?」

八王子アナからの突然の質問に、思わず聞き返す。

「私と番組共演するようになったことです。」

彼は少し自虐気味に笑って言った。

「……そんなことないですっ!隣で勉強させて頂くことばかりで、不安はあっても、後悔したことは一度もありません。」

お世辞ではなく本心からそう告げる。
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