紳士的上司は愛を紡ぐ

「よかった…でもやっぱり不安はあったんですね。二宮アナ、たまに凄く思い悩んだ表情をしているので。」

ほっとしたように、彼はそう続けた。

そんな表情をしていたとは……。
基本的に職業柄、笑顔はすぐに出来ても、浮かない表情はしないよう心掛けていたのに。放送中には出ていないだろうか。

「勿論、放送中ではないですよ。」

私の心を読むように、八王子アナが付け足す。
番組上ではないことに安心して、ほっと胸を撫で下ろした。

「ご心配をおかけして申し訳ありません。以後、気をつけます。」

彼の心配が嬉しくても、業務的にそう話してしまうのは私の悪い癖かもしれない。

「いえ、心配だったんです。急に貴方を共演に指名してしまったことで、負担をかけているんじゃないかって。」

ええ、八王子アナのお陰で、私の"安定生活"はちょっと崩れてきましたよ。

なんて勿論、言えるはずもなく……。

< 45 / 143 >

この作品をシェア

pagetop