紳士的上司は愛を紡ぐ
……前言撤回。
私は、まだまだ彼には敵わないらしい。
これだから嫌なんだ、人気者と関わりを持つのは。結局は単純な自分が、簡単にその魅力に囚われてしまうと分かっているから。
その颯爽と歩く背中に追いつくには、一体私はどうすれば良いのだろうか。
番組中は冷静でいられるようになった自身も、カメラが無ければ、ただの人間なのだと思い知る。
私は手早く原稿をまとめると、頬に感じる熱を冷まそうと、足早にオフィスを去った。
夜風の中、覚醒した思考を占めるのは、先程の彼の質問のことばかりだった。