紳士的上司は愛を紡ぐ
演技だと分かっているが、急激な心拍数の上昇に心臓がおかしくなりそうだ。
「だから、そんな麻里さんに、
きっと似合うだろうなと思って………これ。」
そう言って首に腕を回され、付けられたのは、光輝くネックレスだった。
落ち着け、私。これは番組が用意したものだ。
彼が取り出した箱を見てご覧、"『8+2=』企画用小道具" っていう付箋が付いたままだ。
「麻里さん、似合ってる。可愛い。」
そう呟く彼の目が、柔らかな弧を描く。
待て、番組のもの、しかも付けるのは今だけ。
必死に言い聞かせ、自分なりに平静を保つ。
「あ、ありがとうございます。」
動揺の余り、もはや颯さんが何て言ってくれていたのかも思い出せないが、勢いよく頭を下げる。