紳士的上司は愛を紡ぐ

「そんな……顔上げて?もっとその綺麗な眼差しを僕に向けてほしい。」

と言って、颯さんは私の頰に手を当て、視線を合わせる。

だめだ、ダメだ、駄目だ。

本当におかしくなってしまう。いや勿論、絵面が可笑しいのは最初から分かっている。人気俳優からこんな心臓直撃胸キュン台詞を受けるくらいなら、何かの罰ゲームの方がまだ喜んで受けるだろう。

最大限の悲鳴を心が叫んでいると、


「 カッットーーー!!!

OK、お疲れ様。颯くん良かったよ〜!」

と遠藤さんからの合図が掛かった。

「ありがとうございます!二宮アナもありがとうございました!」

瀕死状態の私に向かって、颯さんは再び明るくお礼を言う。当たり前だがさっきまでの時間が演技だったのだと痛感する。


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