紳士的上司は愛を紡ぐ
真っ先に脳裏に蘇ってきたのは、
─── "好きだ"
といったあの時のことだった。
いやだから、これは私に対してじゃなくて。
先程から自分勝手な思考回路には、我ながら呆れたものだ。
慌てて首を振りながら、考え直す。
「うーん……待ってくださいね。」
きっと収録の時、忘れないように八王子アナに言われた何かがあったのだろう。
それを忘れてしまっていること自体、やはり問題があるのだけれど。
「記憶に、ないですか?」
深夜のためか、普段より落ち着いたトーンで再度尋ねられる。伺う彼の眉間に未だ皺が寄っていて、本格的に怒らせてしまったのだろうと怯える。
「申し訳ありません、思い出せないです。」