紳士的上司は愛を紡ぐ
思考をフル回転させて俯いていた顔を、彼の元へ戻した。
すると、一体何故だろう。
……八王子アナの顔が目の前にある。
私は気づいた途端、
速くなる鼓動よりも急いで後退ろうとした。
つもりだったのだが。
ガシっと、私の腰に彼の腕が回る。
どういうわけか、彼のよって進路は阻まれた。
「えっと、八王子アナ、離して下さいっ。」
この間と同じ状況になってしまった。
というより、エスカレートしていると感じるのは気のせいだろうか。
「本当は心当たりがあるんじゃないですか。」
腰に手を添えたまま、彼は私と距離を詰める。心臓は痛いほど音を立て、私はそれに気付かないフリをして必死に身を捩った。