紳士的上司は愛を紡ぐ
以降、番組の内容をあまり覚えていない。
気付けば、テレビの電源は切れていて、真っ暗な画面には酷く落ち込んだ表情の私がいた。
「麻里、聞いた?さっきの。」
考え込んだ様子の涼子と画面越しに目が合う。
「うん、"10年前"って…………。」
颯さんの言う通り、"一途"なことはよく分かる。ただ、10年前には、
「私、八王子アナのこと知らない。」
当たり前だ。
普通に計算して、当時彼は21歳、私は19歳。出身大学も地元も違う私達は、まだ知り合ってすらいない。
……ただの他人だ。