私を溺愛してください!
…朝だって、あんなに俺を印象付けたのに、葉瑠から連絡が来ることはなかった。

…イライラがつのる。

そんなある日、会社ロビーを歩いていると、その場にいた社員たちが俺に頭を下げる。

社内に俺を知らない者はいないだろう。

最後の社員の横を通りすぎた時だった。

どこかで嗅いだ事のある匂い。かといって、香水とか、化粧品の匂いではない。

俺は足を止め、その社員の方に体を向けたが、俺が見えたのは、その社員の後ろ姿。

総務部の制服を着た女子社員。

黒髪ロングのを一つに束ね、少し横を向けば、黒縁眼鏡がチラッと見えた。

…どこかで見たことがあるような気がする。

が、あんな地味な女は知らない。

俺は前に向き直り、エレベーターに乗り込んだ。
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