私を溺愛してください!
宗吾は今も、凛花と一緒にいるのだろうか?

そう思っただけで、胸が苦しくなる。

泣きたくなって、唇を噛み締めた。

「…宗吾の事は、もう考えない。唇を噛み締めたら、その唇が可哀想」

車のドアを開けた澪がそんな私に気づき、そう言うと、私の唇にそっと触れた。

「…葉瑠さん、俺なら貴女を泣かせない、辛い想いなんてさせないよ」

そう言って見つめられ、傷ついた私は、澪に引き寄せられそうになった。

「…葉瑠!」

だが、それは出来なかった。

私は誰かに後ろから抱き締められた。

…この匂い、この腕の感触、この声。

私は振り返ることが出来なかった。
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