私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「簡単なものでよければなにか作ってやる。ただし、こんな時間だからな、あとから太ったって文句言うなよ?」

「いいんですか!? ありがとうございます」

「まったく、世話の焼ける女だな」

そう言いつつも、石堂さんの表情にはほんの少し笑みが浮かんでいた。

石堂さんの手料理にすっかり釣られてしまい、私はいそいそとカウンターに座った。どうやって帰ろうかと考えていても仕方がない。とりあえず始発まで店に留まることにした。

そういえば。初めて石堂さんがキッチンで料理してるの見た――。

手馴れた手つきで野菜を切り、コーヒーを淹れる姿もかっこいいけれど、料理を作っている石堂さんも素敵だった。

石堂さんって、口は悪いけど、本当はすごく優しい人なんだな――。

彼といると、どうしても緊張してしまう。けれど、そんな中でも不思議と心地の良さを感じた。

嫌われようが、なぜか私の気持ちはそれに反比例してしまう。

店にいてもいいと言われ、悪いと遠慮しつつも、もっと石堂さんと一緒にいたい。という気持ちがあったことも確かだ。

一緒にいたい。もっと知りたい。という気持ちから、恋愛感情になることもある。

いやいやいや、そんな気持ちになるはずない! うん、なるはずないよ――。

ぶんぶんと心の中で否定して下を向きながら首を振る。すると……。
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