私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「お前の顔って、なんでそうコロコロよく変わるんだ?」

「え?」

石堂さんの声にハッと我に返り、顔をあげると食欲をそそるいい匂いがしてきた。玉ねぎを炒めた時の香ばしくて甘い香りと、酸味の利いたトマトのツンとした香りが入り混じって、私の腹の虫は今にも暴れだしそうだった。

「ほら、出来たぞ」

トングを器用にまわして皿に盛り付ける。それは短時間で調理したとは思えないほどピーマン、ベーコンと様々な具がしっかり入っていて、彩りよく粉チーズとパセリが振りかけられた本格的なナポリタンだった。

「美味しそう!」

目の前に出されたナポリタンに目をキラキラさせていると、石堂さんはご丁寧にグラスに水まで用意してくれた。

「ありがとうございます。いただきます!」

コーヒーを淹れるのも料理も上手で、自分にはないものを持っている人に惹かれてしまうのは不可抗力に近い。

あぁ、なんか私、さっきから食べてばかり――。

フォークに巻きつけて口に運ぶと、ケチャップよりも酸味の利いた大人のナポリタンの味がした。

「美味しいです」

「当たり前だろ」

石堂さんは私の反応に、得意げにふふんと鼻を鳴らした。
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