私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
自分のために誰かが料理を振舞ってくれたのは久しぶりだ。もちろん母親の料理などもう覚えてはいない。そんなことを考えていると、目頭が熱くなってうっすら瞳が濡れてきた。

「美味しいです、ほんとに……グスッ」

「お、おい……なに泣いてんだよ、ただのナポリタンだろ」

「ただのナポリタンでも、私にとっては最高のご馳走なんですっ」

泣きながらナポリタンを食べるなんて、傍から見たら滑稽かもしれない。抑えきれないしょっぱい涙が口の端から染み込んでくる。

「お前を見てるとほんと、飽きないな。その……怪我のことは、すまなかった」

石堂さんが申し訳なさそうに沈んだトーンで言う。

「どうして石堂さんが謝るんですか? 私がドジしただけです。だから気にしないでください」

そう言って、明るく笑って見せたけど、石堂さんの表情はいつになく曇っていた。コーヒーをトポトポと注ぎ、続けてスチームされて泡立ったフォームドミルクを淹れたかと思うと、石堂さんは楊枝で器用になにやら描き出した。
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