私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「そうだったんですか……なんか、すみません」

わざわざ住所探してくれたんだ――。

石堂さんが少しでも自分のことを気にかけてくれていたことが嬉しい。

「今日はどうでしたか? お店」

ガサガサと石堂さんが持ってきた袋の中を漁り、一枚の紙を取り出すと、それをずいっと思い切り私の目の前に見せつけた。

「これは……」

「店はいつも以上に満員御礼。誰かさんが作ったこのチラシのおかげでな」

ピンっと指でチラシを弾く石堂さんの表情はあまり穏やかではない。

そのチラシは週末の休みを使ってずっとパソコンに向かいながら、私が試行錯誤で作ったものだった。本当は自分で刷って休憩時間にでも駅前で配ろうかと思っていたのに、店に行けなくなってしまったため、今朝怜奈に連絡して「送ったデータのチラシを印刷して配って欲しい」とすべてを任せたのだ。

「こんなチラシ作っていいなんて許可した覚えはないぞ」

「すみません……」

「おかげで店は大混雑。そのくせチラシを作った当の本人は病欠ときてる」

怜奈がどのくらいこのチラシを配ってくれたのかはわからない。たくさん人を呼ぶことだけを考えすぎて、店の人がどれだけ大変なことになるか失念していた。

私、また失敗しちゃったの――?

自分の軽率さにうんざりだ。良かれと思ってやったことが裏目に出てしまった。
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