私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「そうはいっても、お前が店にいないと……なんか変だ」

石堂さんが私の視線から目を逸らして、そうぽつりと口を開いた。

「馬鹿みたいに真っ直ぐで、ドジで……おまけに世話が焼ける」

「うぅ……すみません」

「最初は、どうせバリスタになりたいって言っても、軽い気持ちで言ってるだけだと思ってた」
ふと、以前雅人さんが私に言っていたことを思い出す。

――ほとんどがミーハーな半端者で、そんな連中に教えるのに嫌気がさした慧は自分の技術そのものを教えるのをやめた。

――あいつ、見かけによらずコーヒーに関しては熱いところがあるからなぁ。

そっか、そうだったんだ。石堂さんの本当の気持ちがなんかわかった気がする――。

石堂さんは本当にコーヒーが好きで、バリスタという仕事にも誇りを持っている。それだけに中途半端にされると、冒涜されたような気持ちになるのだと思う。

「私のこと、信じてくれませんか?」

「え?」

「私、絶対石堂さんみたいなバリスタになります、きっと。ずっとずっと石堂さんと一緒に仕事がしたい」

そう言いつつも、熱で息が荒くなっていくのがわかる。横になっていても目眩を感じる。

頭で考えて言葉を喋る余裕がない。思いついた言葉が、ポンポンと口から出て行く。石堂さんは、少し唇を噛んでじっと私を見つめていた。

「はぁ、わかったよ。お前の面倒全部見てやる。だからもう喋ってないで寝てろ。また、熱が上がってきたな」
石堂さんの大きな手が私の額に載せられる。

私、どうしてドキドキしてるの――?

熱のせい――?

それとも……。
< 139 / 294 >

この作品をシェア

pagetop