私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
熱のせいとかじゃない。私、石堂さんに惹かれてる――。

いつから意識し始めたか定かではないけれど、もしかしたら初めて石堂さんの姿を見た時から気になっていたのかもしれない。

コーヒーを淹れる姿に目を奪われ、きつい言葉を浴びせられても、それでも頑張ってこられたのは、バリスタになりたいという気持ちと、石堂さんに少しでも近づきたいという気持ちがあった。

「ちょっと待ってろ、冷却材買ってきてやるから、熱が下がらないんじゃ、どうしようもないな」

「……はい」

引越しをする前にいらないものは全部捨てた。越してきてから新たに買う必要もないだろうと思っていたけれど、まさかこんな時に必要になるなんて……。

石堂さんが部屋を出て行ったのを見届けると、私の意識はそこで事切れた。

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